マガジンのカバー画像

エリックの多言語文字散歩

6
多言語表記をはじめ文字・書体・組版に関する見方と考え方、時には雑感などを分かりやすくお伝えします。
運営しているクリエイター

記事一覧

英語か米語か?簡体字か繁体字か?〈エリックの多言語文字散歩〉

みなさんが多言語対応を行う場合、対応すべき言語はいくつあるか?と言語数を把握したくなるかもしれません。そうすると、いきなり中国語の「簡体字」「繁体字」という壁にぶつかることでしょう。「簡体字と繁体字はどう違うの?」「一カ国語として数えていいの?」などなど、素朴な疑問がいっぱい出てきます。 残念ながらすべてが解決できる簡単な回答はありませんが、今回はあえてそれを切り口として、専門用語をできるだけ使わずに、多言語対応における「文字」と「言語」の関係性について解説します。 言語

GB18030-2022が来た!詳細編—内容から読み取る本質〈エリックの多言語文字散歩〉

前回の概要編では、じっくりとGB18030-2022の表紙を見ながら、中国におけるGBの定義、GB18030規格改定の概要、製品への搭載義務などについて解説しました。今回は、いよいよ表紙をめくって更新された内容について詳しく解説していきます。 漢字はとにかく多いGB18030-2022の規格書の実物を見ると、まずその厚みに圧倒されるでしょう。700ページを超えるページをパラパラとめくってみてわかるのは、本文はわずか8ページ程度で、残りのほとんどは付属書である長い文字コード表

GB 18030-2022が来た!概要編—表紙から読み取る情報〈エリックの多言語文字散歩〉

時は2023年、夏。中国の文字界隈でもっともホットな話題は、新しいGB 18030-2022の施行でしょう。 みなさんも、いよいよGB 18030-2022が2023年8月1日より施行されるという話を聞いたことがあるかもしれませんが、実際にどのような内容で私たちにどのような影響があるか、ご存知ない方もいらっしゃることでしょう。 そこで、GB 18030-2022について概要編と詳細編の2回に分けて解説していきます。 今回はGB 18030-2022の概要編として、中国から

「その多言語、必要ですか?」本当に必要な多言語対応を、街中の案内から考える〈エリックの多言語文字散歩〉

いきなりですが、街角の商業施設でこんな看板を見たら、皆さんはどう思いますか? 上の図は、実在する看板の写真をもとに再現したものです。 ATMという文字列がなぜか5回も重複して書かれていました。主張が強いATMだなと思いつつ、隣にある化粧室の案内も見たところ、何度もATMと書かれている理由がようやくわかりました。どうやらそれぞれ日本語・英語表記と、中国語簡体字・繁体字・ハングルを表現しているようです。 その多言語、必要ですか?昔、先輩から「国際空港に着き二カ国語表記の案内

「脱・ツギハギ」の第一歩〈エリックの多言語文字散歩〉

前回の記事では街中で見かける案内板や注意書きなど、読み手を気遣うための中国語が、なぜツギハギのような見た目になってしまうのかを解説しました。 その原因は「フォールバック」というパソコン上の仕組みにありました。いくら内容が正しくとも、不適切なフォント選びは読み手に不安感を与えてしまうことがわかりましたね。 文章は内容だけでなく、選んだフォントによっても読み手を気遣うことができます。今回はその気遣いの第一歩をご紹介します。 大原則はただひとつ単刀直入にいうと、大原則は「フォ

その中国語の案内文、フォントがツギハギになっているかも?〈エリックの多言語文字散歩〉

自己紹介こんにちは!文字散歩(文字を探しながら散歩すること!)が大好きなエリックです。 私は中国生まれですが、日本在住も17年間を超え、その間も十数カ国を飛び回った経験があり、あちこちで様々な言語と文字を見てきました。そのご縁もあって、中日韓のフォントメーカー(タイプファンドリー)数社と多言語書体開発のプロジェクトに関わってきました。そして、その中で「ネイティブの視点とは、いったい何か?」をずっと考えて来ました。 この場をお借りし、中国語に留まらず、多言語表記をはじめ文字