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生まれ変わるスポーツの大会「SAGA2024」のデザインができるまで

「第78回 国民スポーツ大会」「第23回 全国障害者スポーツ大会」の愛称となる「SAGA2024」は、2024年の10月に佐賀県で開催されます。
2024年の佐賀県大会は、従来の「国民体育大会」の名称が「国民スポーツ大会」に変わる最初の大会となります。

SCREENグラフィックソリューションズはSAGA2024実行委員会との間で大会協力企業としての協賛契約を締結。「ヒラギノ角ゴ W6」を「SAGA2024」実行委員会に提供し、本大会のロゴ(メインメッセージ)の和文部分をはじめ、会場の装飾や広報活動において使用されています。

「国民体育大会」のビジュアルというと、マスコットキャラクターのイメージが強いかもしれません。
SAGA2024のビジュアルを一度ご覧いただきたいのですが、これまでの大会とは一線を画すビジュアルであることが伝わるかと思います。

SAGA2024公式Webサイト

今回名称が変わり、新しい大会を象徴するデザインがどのようにできあがっていったのか、佐賀県 SAGA2024企画広報チーム中島修一様(以下、中島様)と、SAGA2024総括デザイナーの株式会社テツシンデザイン代表 先崎哲進様(以下、先崎様)にお話を伺いました。


SAGA2024開催日程

  • 2024年10月5日(土)から10月15日(火)および2024年10月26日(土)から10月28日(月)

  • 会期前競技9月5日(木)~17日(火)、9月21日(土)~10月1日(火)

SAGA2024が伝えたいメッセージ

--いよいよ開催が今年の10月に迫っています。まずSAGA2024はどのような大会なのか教えてください。

(中島様)
毎年都道府県の持ち回りで開催される国内最大のスポーツの祭典で、2024年は1976年以来、48年ぶりに佐賀県で開催されます。また、スポーツ基本法の一部改正を契機として大会の名称が変わります。

あくまでも名称の変更はきっかけで、私たちは、感動したり、人の魂を揺さぶるなどの「スポーツ」の持つ根源的なチカラをあらゆる場面で感じてもらえる大会にしたいと考えています。

スポーツは実際に「する」だけではなくて、「観る」(応援する)楽しみだったり、ボランティアや寄付、グッズ購入を通じて「支える」という要素もあります。そういったスポーツの魅力、価値を知ってもらいたい。

SAGA2024のロゴの中にあるメインメッセージ「新しい大会へ。すべての人に、スポーツのチカラを。」というのはそういった根底の考えのもと、先崎様に総括デザイナーとして参画いただいて全体のデザインを監修いただいています。

佐賀県 SAGA2024企画広報チーム 中島修一様

SAGA2024のデザインコンセプト

--まずは先崎様の役割について教えていただけますでしょうか。

(先崎様)
会場装飾や広報等のビジュアル含めた全体のデザインと、自治体さんの実行委員会によるデザインの統一感を図るための監修を担当しています。

SAGA2024総括デザイナー 株式会社テツシンデザイン代表 先崎哲進様

--今回SAGA2024のビジュアルを拝見して、これまでの大会と全く異なるデザインのコンセプトを感じました。この大会に出場できる、観戦できることが誇らしくなるデザインというのが第一印象です。
このデザインはどのように創り上げていったのでしょうか。

(先崎様)
最初からデザイナーとして参画したわけではなく、2019〜2020年頃にどういう大会をつくるのか方針を決める段階で、アドバイザーとして関わらせていただきました。

大会の名称が変わるにあたって「体育」は教育的なイメージがあったのですが、「スポーツ」はエンターテインメント性が高く、皆で楽しむものという印象があります。

単純に言葉が変わるだけではなく、時代に合わせて大会の意味も変えていこう、SAGA2024が節目になる大会にしよう、という思いからスタートしました。

そうして最初にロゴマークをデザインさせていただいたのですが、大会のビジュアルも決まっていない中で、メッセージを伝える必要がありました。

当初はあまり色を付けすぎず、かつメッセージを伝えたいという思いから、シンプルにメインメッセージ「新しい大会へ。すべての人に、スポーツのチカラを。」を伝えるロゴマークとポスターが最初のデザインになります。

SAGA2024ロゴマーク

SAGA2024とヒラギノフォント

(先崎様)
ロゴマークとポスターを作るにあたり、フォントを選ぶ段階でいきなりヒラギノ角ゴを使ったわけではありませんでした。

様々なフォントから探す基準として、まだ大会がどのような方向にいくのか暫定的にしか決まっていなかったため、どの方向になっても整合性が取れるように「ニュートラルであること」を重視しました。

また今後、自治体ごとによるデザインを考えると、全員がデザイナーではないため、多くの書体を駆使できる環境がありません。そのためOSに搭載されているフォントなど、比較的多くの方が使えるフォントであることも重要なポイントでした。

上記の条件から、綺麗でニュートラルであり、macOSに搭載されていてデザインの統一感を図りやすい、という観点からヒラギノ角ゴを選びました。

キービジュアルがどうなるかわからない状態で書体の選定とロゴマーク/ポスターのデザインを進めたのですが、他の書体を選んでいたらキービジュアルの段階で違和感が出てきたり、フォントを見直したりしていたかもしれません。ヒラギノ角ゴを使ったことによって、後から制作したキービジュアルにもうまく調和してくれました。

実際にヒラギノ角ゴが使用されているパンフレット

スポーツをする人が主役になるピクトグラム

--嬉しいお言葉、ありがとうございます。
ビジュアルでピクトグラムが特に印象的ですが、こちらはどのようにできあがったのでしょうか。

(先崎様)
これまで大会を見ていただくと必ずいるのがマスコットキャラクターです。マスコットキャラクターを中心に全体の統一感を図るというのが通例でした。

マスコットキャラクターは老若男女受け入れられやすいのですが、いかんせん「スポーツ」のイメージとあまり結びつかないですし、マスコットキャラクターというものに頼ってしまいかねない。

マスコットキャラクターは日本らしい文化のひとつですが、今回私たちが伝えたい「すべての人に、スポーツのチカラを。」を考えるとキャラクターではなく、スポーツをする人が主役であるべきだと思い、選手のピクトグラムをキービジュアルにするコンセプトを提案しました。

(中島様)
ピクトグラムは「リアルアスリート・ピクトプロジェクト」と題して、実在するアスリートのシルエットをもとに制作しています。Webサイトではモデルとなった方々のご紹介もしています。

例えば高等学校野球のピクトグラムですと、夏の甲子園の決勝戦で逆転満塁ホームランを打って優勝に導いた佐賀北高等学校の当時の選手がモデルとなっています。

その逆転満塁ホームランのシーンをピクトグラムにしていて、単なるデザインではなくスポーツの魅力、感動、思いを詰め込んだシンボルとして作っています。

大会ピクトグラムの例:左から順に高等学校野球、滝登り、車いすバスケットボール

デザインを統一する難しさ

--既存の大会とビジュアル的にも大きく変わるなかで、デザインのプロジェクトではどのような課題があったのでしょうか。

(先崎様)
通常小さなプロジェクトではひとつのデザイン事務所で完結するのですが、今回は大きい大会のため自治体さん含め多くの方がデザインに関わります。そういった点で、いままさに課題が出てきています。

自治体さんに対し、こちらがデザインを押し付けすぎてもいけないし、制限が無さすぎると、デザインの統一感による訴求力が落ちてしまいかねません。

会場や競技によってはこちらが作ったものよりも、自治体さんが作られたデザインの方が多く使われる場合もあります。そういった意味では大会がスタートすると自治体さんが主役になるので、全体の調整が今後の大きい課題です。

いまは大変ですが、SAGA2024以降の大会も含めるとこれからどういった反応が起きるのか楽しみですね。

(中島様)
SAGA2024をきっかけに、佐賀県だけで終わるのではなく今後も繋げていきたいと思っています。直近の開催県である滋賀県、青森県、宮崎県やそれ以降の開催県の皆さまに、私たちの取り組みをひとつでも繋げてほしいと考えております。

--SAGA2024で生まれた新しい動きが続いていくよう、応援してまいります。本日はありがとうございました!

編集後記

今回は佐賀県 SAGA2024中島様と、SAGA2024総括デザイナー先崎様にお話を伺いました。

生まれ変わる大会を契機として、スポーツの魅力や価値を知ってもらいたいという、SAGA2024に関わる皆さんの思いがビジュアル、フォント、ピクトグラムをはじめとして、随所に込められていることが伝わってきたインタビューを通じて感じました。

SAGA2024は10月の開催に向けて、様々な取り組みやイベントが開催されています。ぜひ様々なカタチで参加して「新しい大会」を目にしましょう!

SAGA2024公式Webサイト