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ヒラギノフォント公式noteのVIを紹介します。

はじめまして。デザイナーの今市達也です。今回、ヒラギノフォント公式noteのアートディレクション及びデザインを担当させていただきました。
普段は組織の創造性を発揮するための理論創造と社会実装を行う株式会社MIMIGURIのクリエイティブ部門に所属しており、企業様のブランディング設計やフォント開発を行なっています。
今回、 macOSのシステムフォントとしても採用されているヒラギノフォントのオウンドメディア「ヒラギノフォント公式note」のVI(ビジュアルアイデンティティ)が、どのような流れで開発されたのかをお話させていただきます。

ブランドストーリーの提案

当初の依頼内容は、オウンドメディアのロゴの制作のみでした。しかしロゴ単体の制作だけでは、ヒラギノフォントの思いや姿勢を世の中に伝えるための世界観の構築が難しいと考えました。

そこで、ロゴと合わせてブランドストーリーとキービジュアルを提案させていただきました。ヒラギノフォント公式noteの考え方や世界観を読者に体感してもらうことで、より本メディアに関心を持ってもらえるのではないかと考えたからです。また、ブランドの基盤となるストーリーを明確にすることで、メディアを運営するみなさんのマインド統一・認識のすり合わせもやりやすくなるのではないかと考えました。

ブランドストーリーを考える中で、1番最初に取り組んだのが読者とヒラギノフォントの関係性の整理です。

ヒラギノフォント公式noteでは課題解決につながるような記事や、ヒラギノフォントだから書くことができる内容を掲載しています。
ヒラギノフォントは記事を通して課題を抱える人の手助けがしたい。
読者は自身の抱える課題をどうにか解決したかったり、知識を増やしたかったりする人が多いのではないでしょうか。
つまり、片方が主軸となるのではなく、読者とヒラギノフォント双方の関係性が大切だと思いました。両者の目的がバランスよく噛み合うことで、両者の間の壁が取り払われ、結果的に本メディアも成長していきます。

この関係性をビジュアルに起こしていけたらよいのではないかと考えました。

見えないものを見える化する

このオウンドメディアは読者とヒラギノフォントを繋ぐ接点です。

Webの性質上、この接点には物理的な形がありません。そこで両者の繋がりがより認識しやすいように、手軽に貸し借りができる学習ノートをモチーフにすることにしました。
読者が学ぶことで、この知識のノートの数や厚みが増していきます。読者がさらに知識を求めれば、オウンドメディアもコンテンツが増え成長します。

この両者による成長の好循環を見える化できないかと考えました。また両者にとってヒラギノフォントのノート種類が増え、厚みを増していくことを楽しんでもらえたらいいと思いました。

モチーフ構想のコンセプトアート

ビジュアルについて

ヒラギノフォントの豊富な種類とウェイトを使った表現

これらのノートを、ヒラギノフォントの「ノ」の字で表現しました。豊富な種類とウェイト(太さ)の幅が特徴であるヒラギノフォントならば、このコンセプトを体現できると考えたからです。また実際にノート自体がヒラギノフォントの字形でできていたら、「ヒラギノフォントが提供する知識のノート」を表すロゴとしても分かりやすい形になると思いました。

ロゴタイプに使用する文字は新規で制作することも考えました。しかしヒラギノフォントとしての「声」を発信するメディアなので、ヒラギノ明朝体の字形をそのまま使用した方がいいと思い、既存の字形を活かしたロゴにしています。

ヒラギノフォントへの想い

コンピュータが世の中に広く普及しはじめた90年代から2000年代初頭では、現代のようにデザインの表現の幅を広げてくれる豊富な種類のデジタルフォントは存在しませんでした。そんな中、macOSのシステムフォントや高速道路の案内標識フォントとして採用されたヒラギノフォントは、アナログからデジタルへの移行に戸惑いを隠せないデザインの現場のインフラとして大きく貢献してきました。

こうしてみると、空気のように寄り添いながらわたしたちの生活を支えてきたヒラギノフォントの恩恵に気づかされます。昨今ますます多くの課題に対するソリューション提供やグラフィック表現の力添えをしてくれているヒラギノフォントが、どのような姿でわたしたちの生活とともにあるのか、これからも楽しみです。

プロフィール
今市達也(いまいちたつや) グラフィックデザイナー/タイプデザイナー 東京造形大学造形学部デザイン学科グラフィックデザイン専攻領域を卒業後、新卒で株式会社DONGURI(現:株式会社MIMIGURI)に入社。タイポグラフィを軸としたCI開発やグラフィックデ ザインを制作。2020年にフォント開発事業「katakata」を開始。主な受賞歴:日本タイポグラフィ年鑑
審査委員賞/入選など。Twitter (@ima_collection)