表情豊かで、どこか懐かしい新書体「ヒラギノ丸ゴ オールド」を詳しくご紹介
2022年2月にヒラギノフォントの新書体、「ヒラギノ丸ゴ オールド W4/W6/W8」をリリースしました。2022年10月26日からはMorisawa Fonts・MORISAWA PASSPORTでも利用可能になります。
ありがたいことに、SNSを中心にたくさんの感想をいただいています。おだやかさと品を感じつつもユニークなこのフォント、実は書籍のタイトル用に描かれたレタリング(主に手で描かれるデザインされた文字)をもとに開発しました。
今回の記事では、ヒラギノ丸ゴ オールドの特徴を詳しく紹介します。また、ヒラギノ丸ゴ オールドの仮名と欧文をデザインした合同会社おりぜにインタビューを実施。制作のきっかけやデザインの工夫など、フォント制作の裏側をお伝えします。
ヒラギノ丸ゴ オールドの魅力を知っていただき、フォントを使うきっかけとなれば幸いです。ヒラギノ丸ゴ オールドが気になる方はもちろん、フォントのデザイン、レタリングに興味がある方もぜひご覧ください。
書体見本
ヒラギノ丸ゴ オールドのウエイト(太さ)はW4/W6/W8の3つをラインナップしています。
特徴の解説
1.表情豊かな線
一本の線の中に、細い部分と太い部分の抑揚があります。また線端がぷっくりしている独特なデザインが、単純に見えがちな一部の片仮名なども表情豊かにしています。
2.個性的な字形
平仮名の「あ/す」では一般的なフォントでは繋げるところをあえて離して、「な/ら」では脈絡(点画の間のつながり・流れ)が強調されています。
片仮名は「カ」に「折れ」があったり、「ス/ネ」のカーブが直線的になっていたり、「ミ」の一画目が水平になっているなど、ほかの丸ゴシック体では見ることのできない、手書きの印象を残した個性的な字形をしています。
3.和文に負けない特徴的な欧文
可愛らしい欧文が多い丸ゴシック体のなかではめずらしく、スマートな印象の欧文です。仮名に見られる「折れ」、片仮名の「ロ」のような高めの重心が採り入れられました。手描きの雰囲気の温かみと、大きな開口部による高い視認性を持ち合わせています。
4.文章のたたずまい
個性的な字形、表情豊かな線が特徴であるヒラギノ丸ゴ オールドの仮名は、文章として並べてみると不思議と押し付けがましい印象はありません。はっきりとした個性を持ちながらも、どこかおだやかで親しみやすい独特なたたずまいが、いちばんの特徴です。
デザイナー:おりぜインタビュー
ヒラギノ丸ゴ オールドのデザイナーである合同会社おりぜの岡澤 慶秀さん、岡野 邦彦さんに、制作のきっかけからデザインのポイントまで詳しくお話を伺いました。
制作に至った経緯
(岡澤)活字書体研究の第一人者で書体デザイナーでもある小宮山博史さんが、ビーグラフィックスのブックデザイナーである日下潤一さんのデザインのために、レタリングを書き下ろされていました。2009年に小宮山さんの代わりとしてレタリングの依頼いただいたことが、この仮名との最初の関わりです。
そのまま年に一度くらいのペースで書かせてもらううちに、書体としてまとめられるかもしれないと思うようになって、2017年に小宮山さんと日下さんにご相談しました。お二人ともこころよくお許しをくださいました。
(岡野)仮名のデザインを受けて、欧文は2019年12月ごろから試作を開始し、2020年8月ごろに2案にまとめました。標準的な丸ゴは既にありますし、仮名の特徴に触発されて少し思い切って遊び心を持たせました。また、仮名の持つ個性を損なわないように親和性を重視して制作しています。
レタリングをフォント化するにあたって気をつけた点、調整した点
(岡澤)小宮山さんが日下さんのデザインのために書き下ろした、たくさんの下書きのなかから、より書体としてまとまって見える字形をピックアップしています。
小宮山さんのレタリングで字形はほぼまとまっていたので、その雰囲気をこわさないように書体化することをこころがけました。レタリングは特定の言葉できれいに見えるように調整されているので、書体化するにあたっては、どんな並びでもおかしく見えないように大きさや太さを調整しています。
(岡野)欧文はレタリングをもとにしているわけではありませんが、手描きのような線の動きなどは採り入れています。仮名の個性がはっきりしていたので、それほど迷うことなくスケッチを書き起こしていくことができました。2案のうち、ひとつは仮名に見られる折れた形や、片仮名の「ロ」のような重心が上部にある特徴を採り入れています。もう一つの案は、小宮山さんの数字や、仮名の「す」「る」などに見られる「丸み」や「巻き込み」の特徴を採り入れた案でした。採用した案は、丸ゴではあるものの骨格は四角い印象のあるもので、隣り合う折れた線が互いにかみ合うことで、まとまって見えるように意識してつくりました。
どんな場面/媒体で使ってほしいか
(岡澤)守備範囲がひろい書体だと思います。親しみやすさや懐かしさの演出にはもちろん、動画のキャプションのような現代的な表現にもよく合うと思うので、いろいろと試していただけるとうれしいです。
(岡野)文字の形を見るとわかりやすく共感してもらいやすいデザインだと思っています。パッケージやWeb、映像のタイトルとしても楽しく明るい印象を作ることもできるのではないでしょうか。どのように使っていただけるかを私たちも楽しみにしています。
対応製品
ヒラギノ丸ゴ オールドは現在下記の製品/サービスに対応しています。詳しい購入方法はリンク先のページをご覧ください。
いつでもオンラインでご購入いただけます。
まとめてのご購入でお求めやすくなる製品です。
年間ライセンス製品(株式会社モリサワ)
年間利用/永年利用が選べるサーバー用ライセンス製品です。
Webフォント(アルファベット順)
おわりに
今回は2022年2月にリリースした「ヒラギノ丸ゴ オールド」について、デザインした合同会社おりぜの岡澤さんと岡野さんのインタビューを交えながらご紹介しました。
ぜひ今回の記事を参考にしながら使ってみて、ヒラギノ丸ゴ オールドを1文字1文字、じっくり味わってくださいね!使ってみた感想、街で見かけた報告など、いつでもお待ちしています。
最後までご覧いただきありがとうございました。新しいヒラギノファミリーに関する情報や、デザインに役立つフォント情報を発信していきますので、noteやTwitterもフォローいただけたら幸いです。