幻のファンシー書体ってなに?「ダイゴ・ケアゲ・オイケ」の不思議な魅力に迫る!
1990年代に大日本スクリーン製造株式会社(当時)のフォントラインナップである「千都フォントライブラリー」が拡充され、そのひとつに「ファンシー書体集」がありました。
現在は様々な理由から一般販売しておらず、ハードウェア・ソフトウェア製品への組込みや、ボリューム購入を希望されているお客様向けの特注商品として提供しています。
また最新のフォントフォーマットに対応していない、文字数が足らず主流のフォント規格に対応していないなど、制限が多い仕様となっています。
残念ながら現状では気軽に使えるフォントではありませんが、ファンシー書体の「ダイゴ・ケアゲ・オイケ」について知ってもらいたく、今回記事にしてみました。
「ダイゴ・ケアゲ・オイケ」の文字のかたちを見ながら、3書体の知られざる魅力に迫ります。
それでは早速、ダイゴ・ケアゲ・オイケを見てみましょう!
ダイゴ・ケアゲ・オイケの文字のかたちを詳しく見てみよう
ダイゴはゴシック体をベースに、起筆や終筆に当たる部分に四角で構成されたウロコがアクセントとして付けられているデザインです。
ケアゲはダイゴの骨格をベースに線に抑揚の付いた仮名、明朝体の縦線・横線の太さの差を持たせたデザインです。
オイケは、ダイゴを四角いアクセントを含めて角丸にしたデザインです。漢字を見ると「口部」の下側も丸くなっていますね。
ダイゴ・ケアゲ・オイケの書体の分類は、単純にゴシック体とも明朝体ともいえず、当時の用語でファンシー書体、現代的な用語ではディスプレイ書体(見出し用書体)に分類されます。
さらにもう少し細かく、骨格について見比べてみます。
ダイゴ・ケアゲ・オイケはそれぞれ基本的に字の芯となる「骨格」が概ね共通している様に見えますね。
現在ダイゴ・ケアゲ・オイケは、3/5/7/9というウエイト(フォントの太さ)が用意されていますので、各書体の一番細いウエイト「3」と太いウエイト「9」を重ねてみましょう。
細いウエイトの「3」では、骨格の重なりが見て取れます。
一方で太いウエイトの「9」を重ねてみると仮名はいずれも共通していますが、漢字を見比べてみると、ケアゲだけ骨格が異なっています。これは、明朝体の特徴である太いウエイトでも漢字の横画は細くなることに起因するものだと考えられます。
もしケアゲの太いウエイトの骨格を調整しないと、上の例のようにバランスが悪くなってしまうでしょう。
アウトラインで比べてみると、各書体同士で共通する骨格もありますが、書体単位で違和感のないよう調整が施されています。さらにウエイトによって調整がされているため、どの書体・ウエイトでも高いデザイン性が保たれています。
附属している欧文のデザインにも注目してみましょう。
附属している欧文は、いずれもサンセリフ体がベースとなっています。太細の強弱がない線で構成されていますが、エレメントはそれぞれ異なります。上記にあげた和文(仮名・漢字)のデザインを受けた英数字デザインが収容されており、特にダイゴに附属する欧文は先端がラッパのように開いた特徴的な英数字となっています。
名前の由来もヒラギノと同じ京都に縁
ここでダイゴ・ケアゲ・オイケの名前の由来についても簡単にご紹介しましょう。ヒラギノファンの間では、ヒラギノは京都の柊野という地名から取られていることはおなじみですが、実はダイゴ・ケアゲ・オイケも京都の地名が由来になっています。
ダイゴは京都府京都市伏見区にある醍醐という地名が元になっており、桜の名所の「醍醐寺」が有名です。ケアゲは京都市東山区にある蹴上という地名が元になっており、こちらは「蹴上インクライン」や南禅寺の「水路閣」などが有名です。オイケも京都の地名から取られており、京都市の主要な東西の通りの一つである「御池通」などが有名です。
「ダイゴ・ケアゲ・オイケ」を使うには
冒頭でもご紹介した通り、「ダイゴ・ケアゲ・オイケ」は現在一般販売しておらず、ハードウェア・ソフトウェア製品への組込みや、全社への一括導入を希望されているお客様向けの特注商品となっており、使用するためには個別に契約書を締結する必要があります。
また、対応フォントフォーマットはttcフォントで、Adobe-Japan1-2を概ねカバーしているものの不足文字があり、現代のフォントとして使うには制限があります。
上記の制限があっても使いたい、という方は当社までお問い合わせください。
まとめ
今回は現在では特注商品となったダイゴ・ケアゲ・オイケという3つのフォントファミリーについて詳しく紹介しました。文字の形かたちを見てきました。
この記事を通してダイゴ・ケアゲ・オイケの同じ骨格でも伝わる印象が変わること、ダイゴ・ケアゲ・オイケの持つ魅力が伝われば幸いです。
最後までご覧いただきありがとうございました。これからもヒラギノフォントに関する歴史や新情報、デザインに役立つフォントの情報を発信していきますので、noteやX(Twitter)もぜひフォローください。