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もう迷わない!OpenTypeフォントとTrueTypeフォントの使い分け

フォントを購入するときや使うとき、フォントフォーマット(フォント形式)の違いについて悩んだことはありませんか?OpenTypeフォントとTrueTypeフォントでどちらを選ぶか、悩んだことがあるデザイナー・プログラマーの方もいらっしゃるかもしれません。

OpenTypeフォントとTrueTypeフォントはどちらにも誕生の経緯や役割があり、特定のニーズや用途によって適切なフォーマットが異なります。結論からいえば、OpenTypeフォントはタイポグラフィ・組版などのデザイン性が重視される領域、TrueTypeフォントは組込みなどの互換性や汎用性が求められる領域で採用されることが多いといえます。そしてOpenTypeフォントとTrueTypeフォントから選べる場合は、ご自身の目的や用途に合わせてフォーマットを選ぶことが重要となります。では、なぜフォントフォーマットの違いが生まれたのでしょうか。また用途や領域に違いがあるのはなぜでしょうか。

この記事を読むことで、フォントフォーマットの歴史や成り立ち、現在のフォントフォーマットが活用される領域や関連用語、OpenTypeフォントとTrueTypeフォントの使い分けについて知ることができます。

OpenTypeフォントとTrueTypeフォントの違いについて理解を深めることで、ご自身のプロジェクトにおいてどちらのフォントフォーマットを選べば良いか決定できるようになりますので、ぜひ最後までご覧ください。


OpenTypeフォントとTrueTypeフォントの始まりと現在の役割

はじめに、OpenTypeフォントとTrueTypeフォントについてそれぞれどのようにして始まったのか、そして現在はどのような用途で使われることが多いのかについて概要を見ていきましょう。

OpenTypeフォントの始まりと現在の役割

OpenTypeフォントは、1997年にMicrosoft社とAdobe社から共同でリリースされました。それまでにあったType 1フォントフォーマットとTrueTypeフォントフォーマット、両方の統合を目的として作られたフォーマットです。

現在ではさまざまな環境でOpenTypeフォントを使用できます。特に高度なタイポグラフィ機能が要求されるプロのタイポグラフィ・グラフィックデザインに対応するフォーマットとして、デザイナーが利用する標準的なフォントフォーマットとして使われています。

ヒラギノフォントもOpenTypeフォントによるフォントファイルの提供を行っており、デザイナーが求める高度な文字表現に対応します。

TrueTypeフォントの始まりと現在の役割

TrueTypeフォントの規格は1980年代後半にApple社によって開発され、OpenTypeフォントよりも長い歴史を持ちます。TrueTypeフォントはType 1フォントフォーマットの問題に対応するために作られました。その後TrueTypeフォントは標準化されました。

TrueTypeフォントはOpenTypeフォントに先駆けてWindowsとmacOSの両方でサポートされ、そのほかさまざまなOS・環境下で使用できるようになりました。現在では広く普及したフォントフォーマットになったといえるでしょう。

OpenTypeフォーマットとは何か

では次にフォントフォーマットの面から違いを見ていきましょう。フォーマットとは、わかりやすくいえば、ファイルを作る人と使う人の橋渡しをする「取り決め」といえます。

OpenTypeフォーマットは、WindowsやmacOSで利用できるフォントフォーマットです。OpenTypeフォーマットでは、フォントの中身を内容ごとに「フォントテーブル」として格納する決まりとなっています。

このあたりから「説明が難しいな」と感じる方は、下に示す図まで読み飛ばしてください。


フォントテーブルには、文字の形を表すためのアウトライン、文字コードから呼ばれる文字の形を決める対応表、文脈に応じて文字の形を変えるプログラムなど、フォントの役割において必要とされる項目ごとにテーブルが用意されています。フォントを作る人は、そのフォントに実装したい内容に応じて使うフォントテーブルを決め、フォントテーブルの内容を作っているのです。

文字の形を表すためのアウトライン用のテーブルはいくつかありますが、そのうちの「CFFテーブル」と「glyfテーブル」がOpenTypeとTrueTypeの違いに関係します。一般的にOpenTypeフォントと呼ぶ場合、CFFテーブルを持つフォントをOpenTypeフォントと呼び、glyfテーブルを持つフォントをTrueTypeフォントと呼ぶのです。これが、OpenTypeフォントとTrueTypeフォントの決定的な違いとなります。

それぞれのファイル名の末尾に付く拡張子に目を向けると、CFFテーブルを持つフォントファイルの拡張子は.OTF、glyfテーブルを持つフォントファイルの拡張子は.TTFとすることが推奨されています。

以上をまとめると、現代においてフォントファイルという場合その実体はOpenTypeフォーマットであり、文字の形の方式としてOpenTypeフォント方式とTrueTypeフォント方式がある、と解釈できます。これが歴史の項で述べた「OpenTypeにはTrueTypeが統合されている」ということにつながるのです。


これらを踏まえると、正しくはCFFテーブルを持つOpenTypeフォーマットとglyfテーブルを持つOpenTypeフォーマット、となりますが、記事内ではわかりやすくCFFテーブルを持つフォントファイルを「OpenTypeフォント(.OTF)」、glyfテーブルを持つフォントファイルを「TrueTypeフォント(.TTF)」と引き続き呼ぶこととします。

このCFFテーブルとglyfテーブルはどう違うのか?ということが、この記事の主題であるOpenTypeとTrueTypeはどう違うのか?ということの答えにつながります。

OpenTypeフォントとTrueTypeフォントはアウトラインの形式が異なる

ここまでOpenTypeフォント(.OTF)はCFFテーブルでアウトラインを持ち、TrueTypeフォント(.TTF)はglyfテーブルでアウトラインを持つことを説明してきました。ここからさらに進んで、CFFテーブルとglyfテーブルの違いであるアウトライン方式の違いについて解説します。

「CFFテーブル(OpenTypeフォント)」は、1つの弧を4つの点で構成する「3次ベジェ曲線」によって、アウトラインを構成します。

「glyfテーブル(TrueTypeフォント)」は、1つの弧を3つの点で構成する「2次ベジェ曲線」によって、アウトラインを構成します。

CFFテーブル(OpenTypeフォント)は詳細で正確な曲線の制御が可能で、高品質印刷で有利といえます。一方でglyfテーブル(TrueType)は曲線をよりシンプルに表現できるため、OSやアプリケーションにも依存しますが、高速な描画が求められるときに適している場合があります。

OpenTypeフォントとTrueTypeフォントの使い分け

ここまでフォントフォーマット歴史や現在の用途、OpenTypeフォントとTrueTypeフォントの根本的な違いについて解説してきました。

フォントファイルは上述の通りリソースであるため、フォントファイルを使う環境によってその振る舞いが決定されます。そのため、フォントフォーマット選びにはどのような環境でそのフォントを利用するか、が一番重要な要素となります。

以上を踏まえて、OpenTypeフォントとTrueTypeフォントをどのように使い分けると良いか考えてみましょう。

Adobe社製品でフォントを使う場合

歴史から見ると、Adobe社を源流とするCFFテーブルを持つOpenTypeフォントが適しているといえるでしょう。

InDesignのような高度な組版をする前提のアプリケーションや、ポスターのように大きく印刷する用途であれば、OpenTypeフォントを用いることが組版のうえでも表示品質のうえでも望ましいといえます。
しかし現在はAdobeアプリケーションでTrueTypeフォントを使用できますので、使いたいフォントがTrueTypeフォントしかない場合はTrueTypeフォントを選択しても良いでしょう。

Microsoft製品でフォントを使う場合

多くのMicrosoft製品では現在OpenTypeフォント・TrueTypeフォントどちらでも使うことができます。
ただし、MicrosoftのOSであるWindowsは標準のフォントとしてTrueTypeフォントを搭載していること、OpenTypeフォントよりもTrueTypeフォントの方が以前から利用可能であったことから、Microsoft製品の動作実績ではTrueTypeフォントに軍配が上がると考えて良いでしょう。

なお、Windowsはフォントの描画品質に関わるアプリケーション上の実装方式がさまざまにあること、加えて同じフォント名であってもOpenTypeフォントとTrueTypeフォントで見映えが大きく異なるという特性があります。どちらか選べる場合は、あらかじめ使用するアプリケーション上で意図通りの見映えになるかについて、両方のフォーマットで確認すると良いでしょう。

Apple製品でフォントを使う場合

歴史的背景から考えると、Apple製品ではTrueTypeフォントを選択した方が汎用性の面で向いていると考えられます。また実際にApple製品ではTrueTypeフォントを多く搭載しています。
しかし現在ではmacOS、iOS、iPadOSなどでOpenTypeフォントも利用できること、Windowsと異なりOpenTypeフォントとTrueTypeフォントの見え方の差が少ないことから、品質を重視するOpenTypeフォントのメリットを享受することを検討しても良いでしょう。

アプリや機器への組込みフォントとして使う場合

TrueTypeフォントは歴史が長いため、組込みで重視される「対応する環境の多さ」ではTrueTypeに軍配が上がるでしょう。
OpenTypeフォントの滑らかな曲線をアプリや機器の上で使いたい場合でも、組込みにおいてはそもそもOpenTypeフォント(CFFテーブル)に対応していない場合があります。そのため、組込みの場合はTrueTypeフォントを選択することが多いでしょう。

Webで使うフォントを選ぶ場合

ブラウザがフォントを利用する場合、CSSの規格に基づいてOpenTypeフォントやTrueTypeフォントを利用することになります。OpenTypeフォントやTrueTypeフォントを圧縮したWOFF(Web Open Font Format)と呼ばれるフォントファイルを使用することもできます。

現在広く利用されている各種のブラウザでは、OpenTypeフォント・TrueTypeフォントのどちらも対応しているため、フォントのライセンス元が提供するフォントファイルをそのまま使う、またはフォント配信プラットフォームが配信する形式のフォントを利用する、という場合が多いでしょう。

Webページはフォントに限らずOSやブラウザの違いによって見え方に違いがありますから、Webデザインの確認作業と同様に制作者が意図した状態でフォントが表示できているか、についてもさまざまなOS・ブラウザで確認することがデザインの品質向上につながります。もしOpenTypeフォントとTrueTypeフォントが選べるのであれば、意図した環境下でどちらのフォントファイルが意図した見映えに近いのかを確認すると良いでしょう。

おわりに

この記事では、OpenTypeフォントとTrueTypeフォント、と呼ぶとき、その実体は何なのかについて、歴史やフォーマットから学ぶことができました。さらに、フォントはリソースであること、フォーマットの決定には環境という要素が欠かせない、ということも学ぶことができました。

フォントを利用する環境を明確にすることで、初めてフォントフォーマットが決まることがお分かりいただけたかと思います。

ヒラギノフォントでは、基本的にはOpenTypeフォント(.OTF)でのフォントファイルの提供を行っておりますが、組込み専用(要特注契約)でTrueTypeフォント(.TTF)での提供が可能です。もしTrueTypeフォントのご利用を希望される場合はお問い合わせください。

最後までご覧いただきありがとうございました。ヒラギノフォント公式noteでは、フォント選びに役立つ知識や情報を発信してまいりますので、noteのフォロー、X(旧Twitter)のフォローもぜひお願いします。

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